第64章 有村菜津美の自信

有村母もぼんやりしてはいない。有村菜津美の髪を整え、ドレスの皺を指先で伸ばしながら、細部まで目を光らせていた。

メイクを仕上げた菜津美は鏡を覗き込み、どこにも不自然なところがないのを確かめてから、ようやく満足げに手を止める。

天龍グループ社長に選ばれるために――今日の菜津美は、自分の顔立ちも体つきも、いちばん美しく見える形で差し出すつもりだった。だからこそ、わざわざ特注で、いちばん華やかで、いちばん艶っぽいドレスを用意したのだ。

その装いのせいで、さっきから彼女には「付き合ってほしい」と色めき立つ社長や御曹司が何人も寄ってきた。だが、菜津美の目には誰一人映らない。

「工藤さんは天龍グ...

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